あの日、あの夜、プールサイドで


たかがキスで大袈裟すぎる。


多くの人はそう思うかもしれない。
だけど俺にとってはたかがキス、されどキス。



セックスした現場を見たわけじゃないんだし、キスぐらい多目に見ろよ、とは思えない。




大事なのは体の関係の深さではなく、裏切られたと言う事実だけ。




俺にやたらとモーションをかけてくる玲奈ちゃんみたいなバカ女が、月原とキスしてたところで俺は傷つかないし、気にも止めない。


だけど、相手が真彩だから。相手が月原だから。



俺の絶対の味方で、絶対に俺を裏切らないと信じていた二人だけに、俺の絶望は深くなる。




寧々が必死に守ってくれた“コウにいちゃん”

寧々のために守ろうと思った“コウにいちゃん”




だけど、真彩と月原の裏切りを目の当たりにして、隠れていた悪魔が目を覚ます。


裏切らない人間なんていないんだ。
信用できる人間なんていないんだ。


そう頭のなかで悪魔がささやく。