あの日、あの夜、プールサイドで



「ごめ…、ごめん…コウちゃん…。」


俺の冷たい視線と言葉を受けて、ポロポロと大粒の涙をこぼして困惑してる真彩。そんな真彩を見てもタガの外れてる俺はもう止まることが出来ない。



「ごめんで済むと思ったら大間違いだよ。
泣いて全部が済むとでも思ってんの??」


「……っ!!そ、そんなこと…!!」


「思ってないって??
アハハハハ!!!そんなコトよく言えるよ!!」



俺はチャリを勢いをつけて思いっきり月原の車に向かって、投げつける。



主人のいない自転車はただひたすらに走って月原の後部座席辺りにガンッと大きな音を立てた後、ガッチャンと横になった。



真横に倒れた自転車。
カラカラと後輪だけが空しく回るその音をBGMに


「月原とキスなんかしたその口で、そんなセリフ聞きたくないよ。」



俺は真彩に向かって、どこまでも冷たい言葉を投げつけた。





睨みつける俺に
ただバカみたいに泣いてる、真彩。


『だめ。だめだよ、コウにいちゃん!!』


俺の胸の中で寧々が止めても、もう俺は止まれない。





大事なものに裏切られた。

信じていた人に裏切られたそのショックは、俺の中に巣食う、残酷な悪魔を呼び覚ますにふさわしい絶好の好機だった。