あの日、あの夜、プールサイドで



その声でハッとしたのか

「わ、私園長先生に電話して救急車呼んでもらう!!」

真彩はポケットの中から携帯を取り出して静江さんに電話をかける。



「痛い??どこが痛いんだ?寧々。」

「お、おなか…
おなかいたい……。」


寧々はそう言いながら小さなお腹を小さな手でヨシヨシとさすっていた。



――殴られたとこが痛むのかもしれない。



そう思った俺は

「大丈夫。すぐお医者さんに連れて行ってやるからな?大丈夫。大丈夫だから心配するな。」


そう言って。
不安そうな寧々を膝の上に乗っけてそっとお腹に手を当てると


「痛いの痛いの、飛んで行け~。
イイコの寧々から飛んで行け~!」


アイツが不安にならないように。
泣きたい気持ちと沸騰するほどの怒りを抑えて、必死に柔らかな笑顔を作った。



――大丈夫。


大丈夫だから心配するな、寧々。
寧々は悪い子なんかじゃない。


兄ちゃんの自慢の妹なんだぞ??


天使みたいな笑顔で俺を幸せにしてくれる、たった一人の天使なんだぞ??


「寧々はイイコだよ。
悪い子なんかじゃない。絶対にそれはない。
兄ちゃんの…自慢の妹なんだから。」


心なしか、だんだん冷たくなっていく寧々のカラダを抱きしめながら、お腹に手を当てたままニッコリとほほ笑むと


「う、う…っ。
にいちゃ…、にいちゃ…!!!」


寧々は瞳から涙を流して、俺に向かって手を伸ばす。