あの日、あの夜、プールサイドで



それは誰かが通ったであろうけもの道。
この雑木林は道らしき道なんて何もなくて、ここまでだって苦労しながら前に進んできた。


だけど……
真彩が指さした先には、誰かが通ったであろう跡がある。踏みつけられた草も枯れてなんていなくて、青々とした汁が土に小さく染みついている。


――間違いない。


この先に誰かがいる。




誰なのかはわからない。
もしかしたら寧々じゃなくて、違う他の誰かなのかもしれない。
この先に誰がいるのかなんてわからない。


だけど…ここで引き返すわけにはいかない。


この先に寧々がいる可能性が少しでもあるのなら…俺は確かめないワケにはいかないんだ!!




「よし…行こう!」




俺は真彩の手をギュッと握ると、その小さなけもの道を足早に進んでいく。




「寧々ー!!」

「寧々ちゃん、どこ!?
いたら返事して!!!」




どんどん続くけもの道
長い草。うっそうと茂る木々


昼間だというのに薄暗い
終わりのないほどの距離をどれくらい歩いただろう。


俺は必死に歩いてた。
必死に必死に探してた。


俺の大切な小さな天使
迷子になった小さな天使をもう一度この胸に抱きしめるために、俺はひたすらに歩き続けてた。


あの日のことは…さ??
正直あんまりよく覚えてない。


覚えているのはセミの声がやたらとうるさかったコトと、その日はその夏一番の猛暑日で、とてもとても暑かったということだけ。



そして……
真彩の手がとても柔らかくて、温かだったってことだけ。