喉が詰まる感覚を覚え、慌てて我に返る。


 水を取り出すついでに、ショルダーバッグの中で埋もれているはずの三猿に、「全部お前のせいよ」と文句を言った。



 再び遠くの方で「きゃっきゃ」と笑い声がこだまし、それが山猿の鳴き声だと気付く。

「猿も大っ嫌い」とまた吐き捨て、水をぐいと煽った。


 冷やりとした感触が喉元を通り過ぎると、何となく穏やかな気分になる。





 あの日、「じゃあ、結奈は何が欲しい?」と尋ね返した珀に、私は「珀の最も大切なもの」とリクエストした。


「何だろう」と難しい顔になった珀を思い出し、心が和らぐ。



 あの日も、夕日がとても綺麗だった。




「……」





 未だ沈まず、背中をぽっぽと照りつけている夕日に一瞬の違和感を覚えながらも、私は機械的に煉瓦道を登って行った。