吐き出た物は、怒りと恐怖と不安と、それからたぶん、安堵だった。


 私は泣きながら、珀に色々な想いを語った。

 私自身、何を喋っているのか分からない事を、嗚咽を漏らし「ひっ」とか「うぐっ」とかしゃくりあげながら言っていたのだから、珀には全然理解出来なかったに違いない。


 それでも珀は、体育座りの私の隣に同じ格好で座り、背中のリュックからティッシュボックスを差し出して、熱心に「うん、うん」と聞いてくれた。

 不思議なことに、珀が一つ頷くと、私の重くどんよりしたものが、100グラム分、軽くなる気がした。



 そうやって、珀の何百回もの「うん」と、くしゃっと丸まったティッシュが増えていく中で、次第に私の涙と鼻水は収まり、元気を取り戻していった。


 やっと涙を出し切った私に、珀はリュックから青い水筒を取り出し「はい」と手渡した。

 中に入っていたのはただの水道水だったけれど、水は柔らかく、ちょっとしょっぱくて、ふわりと甘かった。

 しょっぱかったのは、私の涙の名残だったのだろう。



「珀って用意周到だね」