本当は、もっと短い時間だったのかもしれない。

 基地でうずくまってからずっと、様々なことを考えた気がするけれど、どれもこれも最終的には『お母さんのバカ』か『お母さんの嘘つき』になり、考えることもつき始める。



(珀はどうして、私の味方をしてくれないのかな)



 砂粒をスニーカーの裏で擦りながら、唇を尖らせる。

 珀は、母と私の喧嘩に参戦したことがない。



 もちろん、理由は母にもある。



 どんなに激しい口論の最中でも、珀の気配がすると怒鳴るのをぴたりと止め、話題をスッと切り変えてしまうからだ。

 そのせいで、私の中には幾つもの不発弾が積み重なっている。




(もし、珀がその喧嘩にいち早く気が付いて、私の味方をしてくれたら……)



 十歳になったばかりの私は、可笑しくて笑った。



(そんなの私も同じだよ)