「目覚める?」

 何の事だろう。



「君はもうずっと長い間、眠り続けているんだ」

「眠り続けている?」

 珀は、まるで私の問いかけに応じる様に、ゆっくりと、そして大きく頷いた。





「君はあの日、僕の病室を飛び出した直後、病院の階段から転落したんだよ」

「?」

「君はそれからずっと、眠り続けている」






 身体中の血の気が、さあっと引いていくのを感じていた。



「……嘘よ」

 珀が繰り返す。





「君は、ずっと眠り続けているんだ」




 息が、出来なかった。