「…遅いじゃないか、まったく……」
言葉を詰まらせたコハクはお洒落をしたセイラから目をそらす。
「レディには色々あるの。コハクもそれを理解しないと嫌われるよ?」
「何が嫌われるだ。他人の心配なんてしなくて良いんだよ、お前は」
駆け寄り息を整えると悪戯に笑ってみせるセイラ。
そんな彼女の額をつつくコハクの顔にも笑みが零れる。
「さ、早く行くぞ。今日1日予定が一杯なんだろ?」
差し伸べられた掌。
目の前のそれに驚くセイラは不思議そうにコハクを見上げる。
「俺の方が町の事は詳しい。それに、人混みの中離れて迷子にでもなったら困るからな」
そう言い伸ばされた掌を掴むのを迷っているセイラの手を取った。

