「…ックシュン……」
王宮の離れへと繋がる飾り気のない質素な長い廊下。
其処を歩くのは夕食を終えはセイラとコハクの2人。
暖房の効いた中、セイラはクシャミをし身震いする。
「あんな薄着で外に出るからだ。まったく……」
着ていた上着を脱ぐとそれを震えるセイラの肩にかけ、彼女の頭をクシャリと撫でるコハク。
顔を伏せたセイラの頬が赤く染まっている事に気付いた彼は何も言わずに彼女の額に手を添えた。
「っ……!?」
「…このままだと、確実に明日熱がでるな」
独り頷き確信するコハク。
しかしセイラは否定する。
「平気だよ。それに、例え熱がでたとしても明日は絶対に寝込まない。だって明日は私にとって特別な日。町に降りれる唯一の日なんだから……」
人々を不幸にする彼女。
人々を死へと誘う彼女。
人々から拒まれる彼女は今、この国の王宮の離れで暮らしている。
陽の当たらない、誰も近寄らない寂しい場所で。
其処から町へ、人々の暮らす場所へと降りる事が許される日が明日なのである。
何時も孤独な彼女にとって賑やかな町を歩くその日は楽しみで、嬉しくて待ち遠しくて仕方無い。
「コハクこそ、明日遅刻したら許さないからね?」
一歩前へ出て言う彼女。
後ろに手を組む彼女は柔らかく、とても楽しそうに微笑んだ。