身を縮め視界を閉ざし、静かに息をするセイラの耳に入る人々の騒ぎ声。

明るかった筈の声は消え、潜めた声で何か呟く。




 「……」


ざわめく声に顔をあげると、人々は眉を潜め道の端へと移動していた。


何事だろうと視線を泳がすと、近づく馬車の車輪の音を耳にする。



道のど真ん中を我が物顔で進む馬車。

貴族の乗るそれは猛スピードで駆けてくる。



ふと、速度を緩める事無く進む馬車の前方に1人の少女が居る事に気付いたセイラ。



このままでは危険だ。
恐怖からか動かない少女は確実に馬車に退かれてしまう。




 「おい邪魔だ餓鬼!退け!」


皆それが分かっていても、自ら危険を冒してまで少女を助けに向かおうとはしない。


馬車が止まってくれればいいものの、自己中な貴族は速度を落とす事すらしなかった。