賑やかで、煌びやかで、華やかで。
祭りでも特別な日でもないのに何時も活気づくその町中を歩く2人。
今日この日を楽しみにしていたセイラだが、何故か彼女は浮かない表情。
顔を伏せる彼女はコハクに手を引かれ歩いている。
と言うのも、彼女が店へ入れば逃げるように客は退き、店主に声をかけてもまるで居ない者のように知らぬふり。
落とした物を渡そうにも悲鳴をあげ拒まれて、傍を過ぎた赤ん坊は酷く声を荒げ泣き出してしまう。
向けられるのは冷たい瞳。
怒り、憎しみ、拒絶、絶望、恐怖。
全てが負の感情。
全てがマイナスの思い。
全てが暗い思考。
貴女なんかと関わりたくなど無い。
貴女なんか居なければ良いのに。
何故此処に居るの。
近寄らないで。
触れないで。
此処から消えて。
居なくなって。
様々な声が聞こえてくる。
彼女を否定する声が。
彼女の存在を拒む声が。
「ん?セイラ?」
「……」
セイラの手を引いて歩いていたコハクだが、急に彼女が立ち止まった事に気付き振り返る。
「…帰ろう……」
「え?」
「帰ろう、コハク」
彼女の言葉に耳を疑う。
聞き間違いではないかと。
しかしそれは、決して聞き違いなどではなかった。

