ここはとある閑静なマンションの3階にある部屋のひとつ。
夕陽が窓から部屋の中に差し込みほんのりと哀愁を漂わせている。
そんな部屋の一角にあるベッドの上では、一匹の猫がすやすやと眠っている。
どうやら普通に女の子の部屋のようだ。
ゴミ箱が倒れて中のゴミが転がっている。猫が散らかしたようだ。

「ただいまぁー」

一室のドアが開くと同時に猫があくびをしながら目を覚ます。

「あ、ティアまたゴミ箱散らかして。
だめじゃない。」

少女ー梨花がベッドの上でぼぉっしている猫に話しかける。
そしてゴミを片付けてベッドに座り、猫を抱き上げた。
明らかに不機嫌そうな猫。

「あはは、ごめんね。
ティアはあんまりだっこ好きじゃ
ないのよね。」

そう言って猫をゆかにおろしてやると
そそくさと部屋を出て行った。

それからあまり時間が立たないうちに梨花は眠っていた。

ガンガンッ
ガンガンッガンッ
ガンガンガンッ

うるさく窓が叩かれる。
その音で梨花は目を覚ました。

「なんの音ぉ…?」

寝ぼけながらあたりを見ると猫が窓に向かって威嚇している。
ティアは普段威嚇しないはずの猫である。
様子がおかしいと思った梨花は窓の方に視線をやる。
そこにあった光景は、科学では到底証明できないものだった。

ーヒトが宙に浮いているのだ。

梨花は寝ぼけているのかと頬をつねったり、目を擦ったりしてみた。
だか、窓の向こう側の光景は変わらない。
向こう側で浮いているヒト、男性は口をパクパクさせて梨花になにかを訴えている。

「あ け ろ?」

梨花が男性に合わせて呟くと、その男性は首を立てにふった。
梨花は怪しみながらもそっとドアを開ける。
そうすると男性は少しほっとしたような様子でベランダの床に降りた。
よく見ると服はボロボロで小さな傷がちらほら見える。

「あ、あなた、だれですか。
それにその格好は。
とゆうか、宙に浮いてましたよね。」

恐る恐る男性に話しかける。


「俺は、おめぇを迎えに来た。
お前は魔法使いだ。」