僕は体を起こす。


 梯子を下りて、箱ティッシュを取って。


 そうして、餞の代わりに、言うんだ。




「……どこまでも困った姉ちゃんだな」




 軽い頭突きと共に、彼女の小さな悲鳴が響く。


 見えていないはずの彼女の表情が、後からさえ浮かぶ。


 やがて寝息を立てる彼女と反対に、僕は眠れない。



 明日教会で、誓いのキスを目にするまでは。


 ……もう、あんたを見たくない。



 さよなら、僕の姉。