玄関につき靴を取り出し、繰り返し頭に響いてくる名前を消そうとしないばかりに力強くくつひもを縛った。

(忘れればいいんだ・・・なかったんだ、あんな日々は・・)


「いってきます」


「何時に帰ってくるの?」


「知らないよ」


「知らないよなんてないでしょ」


「適当に帰ってくるよ」


「ちゃんと時間を」

(うるさいな・・・)

光は母親が言葉を言い切る前に玄関の扉を閉めた。