樹side


「なんで…なんであの時、お兄ちゃんを殺したの?

 なんで、私じゃなかったの…?

 どうして、お兄ちゃんだけなの…?」


もとから小さい渚は、もっと、身を縮めるように小さくなる。


「ハハハ…あぁあ~。」


渚の流す涙に皆が動けなくなっている空気を潰したのは

将太だった…。


「なんで、笑ってんの…?

 なにが…おもしろいの…?」


「さっきの質問に答えてやるよ。お前の兄貴を殺したのは

 咲夜さんが持つ、地位が欲しかったから。

 お前を殺したところで、俺たちが咲夜さんに叩きのめされて終わり。

 しかも、咲夜さんシスコンだからなぁ~。

 目の前で殺されたら、切れるだろうよ。咲夜さんだけを殺したのは、

 他に殺す人が居なかったから。咲夜さん以外に、興味がねぇーから。」


許せねぇー。


渚は絶望した感じ。涙は枯れ果てたかのように流れてなく、

涙の後はくっきりついている。

口は、少し開いていて、もう、何も考えられない正体。


バキっ


「颯……」


声もカラカラで、聞き取れないくらい小さい。


「てめーだけは許せねぇー。もう一発どころか

 俺の気が済むまで殴らせろっ!!

こんなんじゃぁ、俺の気がすまねぇーんだよ」


「そんなん、俺だって…。」

「僕も…もう限界かも…。」

「俺もそろそろ無理かも、嬢じゃなくても切れてる。」

「俺もだ。これ以上、渚を気づ付けれない。」


皆の意見が一致した。