蓮side


「なんで…?なんで言わせてくれないの?

 私、あれだけじゃ納得いかない!!!

 もっと、はっきり言わなきゃ納得いかない!!!」


嬢…。


そう思ってるのは嬢だけじゃない…


ここにいるみんなが思ってることだ。


嬢の背中にあるあの、大きな傷跡。

この状況で、嬢が一番辛いよな…?

分かってるぜ。


嬢は、力尽きるようにその場に座り込む。


「嬢……。」


辛いよな…。嬢の過去を知ってるから…

ここで声をかけちゃいけない気がした…。


同情になるかもしれないから…。


「なんで…なんであの時、お兄ちゃんを殺したの?
 
 なんで、私じゃなかったの…?

 どうして、お兄ちゃんだけなの…?」


嬢は下を向いて、呟くような小さな声で言った。

でも、どうして聞き取れたのかは…


その場の、空気だ…。


皆、動けない。


嬢に、駆け寄ってやりたいのに…。