尚side


聞き捨てならないあの言葉。


渚っちのお兄ちゃんはお前に殺されたのに、

お前は、軽いって?重いって?渚っちにとっては

忘れられない過去なんだよ。


僕もつい、我を忘れちゃって久しぶりに

拳を、握ったよ。


でも、拳を振るわなかったのは渚っちが先に叩いたから。


「こんなことだけで、許されると思わないでね?

 お兄ちゃんの倍は、かえさせてもらう。

 お兄ちゃんが死んだ、あの日から今まで、私が

 あんたを忘れたことなんてなかった!!

 大好きだったお兄ちゃんを返してよっ!!!!

 私の心にある傷は一生消えないのっ!!!

 あんたのせいで、お姉ちゃんもお母さんもお父さんも

 みんなが悲しんだのっ!!お兄ちゃんじゃなくて、あんたが…」


途中で、言うのをやめた、それは何故か…。


そう、それは、僕たちみんなが渚っちの口を押えたから。


それ以上は言っちゃだめだよ。


息が苦しそうな渚っちの口から手を退かす。


「渚っち…それ以上言っちゃだめだよ…。

 言ったらお兄ちゃん悲しむよ…。」


本能に従った言葉だった。


「なんで…?なんで言わせてくれないの?

 私、あれだけじゃ納得いかない!!!

 もっと、はっきり言わなきゃ納得いかない!!!」


僕もだよ…渚っちだけじゃない。