トビラの向こう側

早く帰ろう。


今日はこれ以上、高遠さんの前で変な行動はとりたくない…。


更衣室のドアをそーっと開けて裏口側と店内の方をうかがう。


まだきっと厨房にいると思う。

かすかに話し声が聞こえたから。


そっと出て、裏口までダッシュ…しようと思ったのに。



「おい!」


ギクッ!捕まってしまった。


たった今、確認したよね…。
確かにいなかったよね…あれから何秒も経っていないでしょ。


「汐里さん、そんなに慌てて帰らなくてもいいだろう?」


高遠さんと顔を合わせたくなくて……

振り向く事も前に進む事もできずに…いた。

「……」


「汐里さん、今日はずっと俺を見てたくせに今度は無視ですか」


やっぱり気づいていたんだ。