トビラの向こう側

「おい、彼女に何を言った?」


「別に女同士の内緒話しだけど。じゃあね」

遥香さんは戻って行った。


「あいつに何を言われた?」


「たいしたことじゃないから大丈夫です」



……この人と同じ視線を向けられた事が前にも…あった気がする…遥香さんのようの鋭い視線を。


ううん…もっと強い憎しみのこもった瞳に…。

その人は「彼の前から消えて」そう言ってたと思う。


いつだったっけ、誰に言われたん―……

あっ頭がいた…い。

私はこめかみを押さえた。


「どうしたの?汐里ちゃん」


「あっ、いいえ」


智也さんは私の額に手をあてた。


「熱はないみたいだけど顔色が悪いな、帰ろう送ってく」


「私、一人で大丈夫です智也さんは同窓会なんだから残って下さい」


彼は首をふった。


「もう少し、したら 送って行くつもりで今日はお酒は飲んでないから行こう」


彼は私を支えるように抱えてカラオケ店を出た。