そのまま世間話をしていると、
大豪邸の前で彼は立ち止まった。
「ここ僕の家。珍しく誰も居ないからちょっと上がってかない?」
まあ、手も繋げないような彼氏には何にもできないよね
「じゃあ、お邪魔しまーす」
家に上がってみると、
しん…としている。
「どうぞ」
「すご…広いね」
「あー僕の父の家系厳しいんだ。じいちゃんは母方のほうでね。生徒会長やら学年一位をいっつも求められるんだよね」
少し寂しそうな顔になる。
彼の切ない顔には、ほんとに負ける。
何にも言わずにできるだけ力強く抱きつくと、
「ありがとう」
なんて言ってさっきよりも声が明るくなった。

