海の向こうに



『陵、落ち着いて聞いて!
皐月ちゃんが危ないの!
早く来なさい!』

母親の慌ててうわずった声が聞こえた。

「すぐ行く!」

陵が駆け出そうとしたとき、真奈美が陵の手を握った。

「行かないで!ここにいて!」

「離せ!悪いけど、今は皐月以外のこと考えてる暇ねーから」

そう言うと、真奈美の顔を見る余裕もなく、一目散に駆け出した。


健太さん、守ってやれよ。
お願いだから。

皐月と健太さんが笑いあう姿を脳裏に浮かばせながら、懸命に走った。