「でも、あの人は俺に聞いたんだ。
皐月は君にとってどんな存在かって。
今でも忘れられない。
真剣な、誠実な目をして俺を見てた」
「なんて、答えたの?」
「正直、なんて答えるかなんて考えなかった。ほぼ、反射的に答えてた。
すごく大事な人だって」
優しい、でも、冷たい風が陵の髪を揺らす。
「そう。司波にとって、皐月さんは大事な人なんだね」
陵が少しだけ笑って、ため息をついたように見えた。
「俺が答えたあと、あの人は
そっかって言って、笑ったんだ。
皐月を必ず幸せにします。って」
「司波...」
「本当に、さすが皐月が選んだ人だと思った。
俺じゃ敵わない」
「別にそんなこと!」
「あるんだ、そんなことある」
陵はそう言うと、静かに海を見つめた。
そんな横顔さえ、格好いいと思ってしまう。
2人の間に沈黙が流れる。

