海の向こうに




「そう。無駄。婚約者を連れてきたんだ 。
優しそうで、格好良くて、ピアスなんかもしてなくて、髪も黒色で。
爽やかで、本当に皐月とお似合いだった」

ザザー、ザザー

と波の音が聞こえた。

「皐月は婚約者に弟みたいな大事な存在だって、俺のことを紹介した。
何だか自分が馬鹿らしくなってきてさ。
これからは皐月にとって、大事な弟みたいな存在として生きていこうと思ったよ。
それ以上は望まない。
でも、最後に欲が出たんだ」


陵がうつ向いた。
口元だけ笑っているように見えた。