海の向こうに



陵の、こんなに優しい笑顔を真奈美は見たことがなかった。

「だから、俺は髪を染めたんだ。皐月と同じ茶色に。それに、ピアスもした。
皐月に釣り合うためには大人っぽくしなきゃいけないと思って」

微笑んだ陵と、真奈美は目があった。


「口もあんまりきかないようにしたりしたけど、無駄だった」

「無駄?」

真奈美が聞き直した。