「ふふ。冗談よ。おばさんにおつかいでも頼まれてるんでしょう?早く行かないと」

皐月はいつものような声で言った。


「さ、私もそろそろ家に帰らなくちゃ」


皐月がゆっくりと陵のもとまで歩いて来た


そして陵と2人で堤防まで上がって来た。


「じゃあ、気をつけてね」

皐月が手を振った。


「なあ!」


帰りかけていた皐月を呼び止めた。



「追うなよ」


皐月が振り返った。


「健太さんはそんなこと望んでない」


陵と皐月は少しの間見つめあった。

それが何秒だったのか、何十秒だったのか分からない。



「大丈夫だよ。心配し過ぎだよ、陵ちゃんは」



皐月が大きな目をきゅっと細くして笑った