「別にいいよ。元はと言えば、俺が忘れたせいだから。弁当サンキュ」


陵が少し笑って言うと、皐月がホッとしたように微笑んだ。



皐月がこんなにも謝るのには、訳がある。


陵がまだ中学生のとき、忘れ物をしてそれを皐月に届けてもらったことがある。


そのときクラスメイトから、散々からかわれた挙げ句に、数ヵ月ほどそのネタをいじられたのだ。

そのことに腹を立てて、皐月に思い切り八つ当たりしたのを覚えている。


皐月は基本的に優しいから、陵がどれだけ文句を言っても、「もう行かないから。ごめんね」と丁寧に謝ってくれていたのだ。