海の向こうに



「おはよ」



「皐月、堤防のとこにいたよ」

和樹が教科書を机に詰めながら言った。



「知ってる。今朝話した」


「なんだ。知ってるんだ」

和樹が少しがっかりして言った。


「なんだよ」


「お前は皐月のことなら何でも知ってるよな」


和樹が肩をすくめた。


「別に。知らないことだってあるさ」

そう言うと、陵が少し笑った。


「知りたくても、怖くて知れない」


口元だけ笑って、真っ直ぐ和樹を見つめた



「ま、全部知るなんて無理なんだよ」



そう言って伸びをすると、窓の外を見た。


「おっとなー」

和樹が茶化すように呟いた。