ザザー、ザザー
波の音が鳴る。
陵は堤防に腰かけて、大きなあくびをした。
薄い茶色に染めた髪に、片方だけつけたダイヤのピアス。
ここは田舎の町。
都心部まで行こうと思うならば、フェリーに乗って行かなければならない。
陵はずっと海の向こうを見つめていた。
ブォーーっと汽笛の音が聞こえた。
その時、「りょうーーーー!」と聞き覚えのある声が聞こえた。
「まーたここにいたの?」
呆れたような顔で、陵を見たのは幼なじみで同じ高校に通っている笠原和樹。
「悪いかよ」
短く返事をして、うーんと唸りながら伸びをした。
「もう学校始まるよ!走ろ」
和樹が陵の腕を引っ張るとが、振り払う。
「お前1人で行けよ」
冷たく言うと、和樹がため息をついた。
「そんなこと出来ないよ!皐月からも陵ちゃんをよろしくって頼まれてるんだよ」
和樹がジロリと陵を睨んだ。