千年樹



 はっ、と目が覚める。

 どくどくと鳴る心臓。冷や汗が凄い。服が汗でじっとりと湿っている。


 ゆっくりと体を起こすと、額からぽたりと汗が落ちてきた。

 汗の落ちた場所をじっと、これでもかってぐらい見つめる。

 すると、次第に落ち着いて来る心臓。


 いつもそうだ。

 いつも起きると、心臓は早鐘《はやがね》を打っている。


「くそっ…、何なんだ」


 ぐっと奥歯を噛み締めながら、今日見た夢の内容を思い出そうとする。


『しゅん、様。しゅ、ん様…、春様。早く――…は、やく……』


 俺は、確かに春だ。
けれど、春様ではない。

 なのに、君は俺を“春様”と呼ぶ。

 そして、毎回俺は君の“春様”の言葉を聞くだけで、すごくすごく、愛しくなる。


 俺は君を“知らない”はずなのに、“知っている”ような気がする。


『早く、早く…貴方に…、おあい…した、い…』



 逢いたい。会いたい。

 君は毎回、二通りの意味で言ってくる。

 何で、俺にあいたいのかがわからない。