千年樹



『しゅん、様。しゅ、ん様…、春様。早く――…は、やく……』


 誰…?


 そんなに、切なそうに…悲しそうに、愛しそうに…俺の名前を呼ぶのは……誰?



 何で、毎晩毎晩夢に出てきては、囁くの?



『早く、早く…貴方に…、お会い…した、い…』



 え?

 君は、俺を知っているの?


 わからない、何もわからない…。


 君は、誰?


 “春様”って、何?



 暗闇の中。姿形も知らない誰かに、呼ばれる。


 聞き覚えのない声。なのに、どこか懐かしい声。


 この声を聞いていると、なぜだか、早く行かなければと思う。


 俺の中の何かが、そう訴えかけてくる。



 なのに、俺は何もできない。



『鈴の…な、る……、木の下で、再び…………しゅ………ん………さ…ま…』



 声が、どんどん遠退いていく。


 鈴の鳴る、木の下…って何?

 君は、俺に何を言いたいの?