恋の華が舞う季節

秦を、あの時傷つけた。


私は葵をとったから。


あんなに、想ってくれたのにね。


「……ざけんな……」


――え?



ばっと秦は目を覚まし、私を押し倒した。


「な……何? し……ん」



「ふざけんなって言ってるんだ! 何が、ごめんだよ。
 何が……」



「秦。お願い、手、のけて。痛いよ」


「嫌だ。離すと結衣、逃げるだろ」


「当たり前でしょ?! 秦、何考えてるの?!」



この体制は――やばい。



「やっと……捕まえたのに、離さねぇよ!」



秦は、あの頃と比べ物にならないくらい、男子になっていた。


声も、体格も、私を見る目も。



「……や! やだ」


「俺だって、こんな状況になりたくなかったよ!
 なのに……お前が、ずっと俺を避けるから!!」