するっと刃が体に食い込んだ。
そのまま貫き、抜く。
一瞬の出来事でしかない。
これで人は死ぬのだ。
傷口から血が噴き出すのは心臓の動きと共に。
がら空きの背中を見つめ、崩れ落ちるのを待った。
必要なのは確かな情報。
確実に死んだか、それだけ。

彼は言った。
死ぬ直前に。
ありがとう、と。
つまりはそういうことだ。
私が何のためにここへ来たのか、知っていたということだ。
彼は悩み、行動した。
その行動は正しかったし、正しくなかった。
私の行動もそうだ。
正しいし、正しくない。