すると、男の手がぴたっと止まり、不思議そうに私を見た。


「マジで抵抗しねぇの?」


男は、申し訳なさそうに言った。


「騒ぐな動くなって言ったのあなたでしょう?」

「そーなんだけど。のままだと犯すけど?いいの?」

「あなたの目的がわかりません。ここまでしておいて、何がしたいんですか。」

「……確かに、騒ぐな動くなとは言ったけどな。…ここまで無抵抗だとなんか、萎えるし、申し訳ないっつーか。」


わからない。
この男の言っている意味がわからない。
犯したいからこんなことするのに、やりやすいから抵抗させないのに、しないのか?

私は今、きっと間抜けな顔をしているだろう。


「やっぱやめるわ。萎えた。」

男はさらりと言った。
この男の思考回路は分からないが、やめたのだということはわかる。


「弁償してください。」


私はぼそりと口を開く。

「え?何を?別に貞操は奪ってねーぞ。」

男が不思議な顔をしている。

「アイス。」

押し付けられた衝撃で、コンビニの袋を離してしまった。
お弁当はぐしゃぐしゃでもいいけれど、アイスは溶けてどろりとしている。

バニラの香りのする液体が、容器の中でたぷたぷ言っている。


「わり……。」

男はそう言って、袋を拾い上げた。