「で、その顔?本当面白いよ安部さん」
「……」
「的確に僕のツボをついてくるんだからね」
昨日二人で泣き明かしたというのに、彼はいつもと何ら変わらない。口ぶりも、…外見も。
私と言えば瞼が異常にはれ上がり、普段はしない眼鏡にマスクをかけざるえない状況だった。無論、変質者ルックである。
彼はすっかり良くなった足を投げ出し窓枠にもたれると、相変わらず柔らかい茶色の髪を、昨日明子さんに撫でられた時のように自分の指先で撫でつける。
「…姉弟なんて嫌なのにさ、姉さんと同じになりたくて。染めたんだよね、この髪」
「…地毛かと思ってた」
「先生にも地毛で通してるしね?それに、最初から色素は薄かったみたいで違和感なかったし」
「…仮にも中学生が髪染めるなんて、不良だ」
「安部さん、級長だっけ。ふふ、今回だけ見逃してよ」
「……横山くん、大丈夫?」
思い出したのは、最初に話した時のこと。今は、自然とこうやって口が動いてるんだから凄い。

