これ以上騒いだら、きっと近くを通った看護婦さんにでも不審がられる。
それをわかっているのか、粗ぶる私をなだめるように彼は抱きしめながら背中をさすってくれる。
「あのね。僕と姉さん、血は繋がってないの。話が、ドラマみたいだよね」
「……」
「たまたま、父さんが再婚したのが姉さんを連れた母さんだった」
「……」
「会って一目で好きになった。今まであんなに綺麗な人見たことなくてさ。…僕も、マセガキでしょ?十も違う姉さんに恋をしたんだ」
「…片思いって、明子さんだったんだね」
「うん、もう何年になるんだろうね…」
他人事のようにぺらぺら喋る口を今すぐにでも止めれたらいいのに。
彼がこれ以上自分を傷つける前に。もういいってば、ねえ。
「本当に馬鹿だよね。ああもう、何となくわかってたのに実際聞いてへこんでるなんてさぁ」
「いいから、もう、わかったか」
「好きだったんだ…っ!好き、だったんだよ。頭がおかしくなる程に…」
出来るなら、同級生と甘酸っぱい恋でもしたかっただろう。結婚おめでとう、だなんてちょっとだけはにかみながら言いたかっただろう。
変えれるものなら、変えていた。
こんなに辛い恋を、いつだって独りで彼は抱えていた。
( 日に透けていく涙を、どう拭えばいいのだろう )

