「初めて、独りじゃないって思えたの」
「…え?」
「言いたいこと聞いてもらえたのって初めてだったんだ。だから僕、結構スッキリしてるよ?」
「そ、なの?」
「諦めきれたとかじゃないけど、自分が前に進みたくなったの。わかる?」
「…何となく」
そう煮え切らない返事をしたのは、抽象的な物言いに困惑したのと、腫れた瞼だと視界はいつもの半分程度しか見えなかったから。揺れる空気で彼が笑っているような気はしたけど、どんな顔をしているのか鮮明にはわからなかった。
「もう、全然わかってないよ。だから、新しい恋をしようかなって言ってるのに」
「…は?」
「姉さんも結婚するし、僕も良い機会だと思うんだよ」
「…あ、そうですか」
そう言うのが、精一杯。でも展開は早いけど、彼が幸せになるのならその方法が一番良いはず、だよね?まだまだ頭は回らない。彼が言うその先の意図が、全くと言っていいほど読めないのだ。
「ん、だから安部さんのこと好きになりたいんだ」
「…ん?」
「安部さんに、気が狂うくらいの恋をしてみたい」
( そうして想いごと、白に溶けていった休日での出来事 )
白から始まった少年たちは、きっとその先のイロをまだ知らない。
end.

