「たまたま、帰り道に交通事故に巻き込まれるなんて。横山くんて...残念だよね」



クラスの子たちが、お金を出し合った花束を花瓶に移しながら、私は言う。目の前の男の子は、ぐるぐるに巻かれて二倍程の太さになった右足を見つめながら溜息を吐いていた。


、、、吐きたいのはこっちだ。
何で級長だなんて面倒臭いものになってしまったんだろう。ほとんど話したことのないような人のお見舞いに行かなくちゃいけないなんて。


「安部さんて結構辛辣だね」


「そうかなぁ。あ、この花瓶ここでいい?」


「うん、お願い。普通は大変だったねーとか大丈夫?とかさ」


「...大丈夫?」


「...遅いよー」



文句を言いながらも、可愛く笑っているところを見ると怪我は足一本骨折したくらいで済んだのだろう。車なんて大きなものと接触した割にはこの程度で済んでよかった、のかな。


ふと、目線を移せば。横山くんの栗色の髪が太陽に透けていた。今まで眼中になかったけれど、よくよく見れば綺麗な人だ。顔が、というよりパーツ一つ一つが。



「いつ退院出来るって?」


「...んー、早くて一か月くらいかな」


「そっか。...頑張ってね」



健康体質で病院との関わりが皆無な私にはよくわからないけれど。
リハビリとかあるのかもしれない。多分、きっと大変なのだろうから。