引越しの荷造りをしてるとお父さんがチラッと部屋を覗いてる。




「・・・なんだか嫁に行くみたいだな」




ポツリと呟いてまたすぐに部屋をでる。お嫁さん・・・



圭吾のお嫁さんになりたかったな。電車の運転士にもお嫁さんにもなりたい。どうして思いは叶わないんだろう。


両方の夢を叶えられる方法があるのなら教えてほしい。


私だけ夢を追って圭吾に全てを捨ててなんて言えない。


本当は仕事をやめて。ここにいて。私のそばで私をいつも応援していてほしい。




そう言いたい。でもそんなこと言えない。私が19歳でも29歳でも言えない。



暗くなっちゃダメだ。だって来年までずっと一緒に過ごせるんだもん。今まではデートの帰り道、ずっと泣いていた。でもこれからは帰る場所が一緒なんだ。


もう「バイバイ」って手を振る必要もない。涙を流さなくてもいいんだ。