電車がホームに着く。


躊躇いもなくそのまま乗り込んだ。



このまま乗ってたら途中でトメさんが乗って来てくれたらいいのにな。たくさんのミカンを持ってニコニコと『奏ちゃん』って言いながら隣に座って欲しい。



ねえ。トメさん私たくさん話したいことがあるんだよ。


ブラウスのボタンを2つほど開けると桜をギュッと握った。圭吾がくれたトメさんの代わり。




あのね、今日は設楽鉄道の面接だったんだ。筆記はまあできたけど面接はちょっと失敗したかも。


心の中でトメさんに話しかける。窓の外の風景は真っ赤な紅葉に彩られていた。