約束の時間から少し遅れて、携帯が鳴った。


窓から外をのぞくと、門の前に黒くて四角い軽が停まっている。


記憶よりも、その車体は小さいような気がした。




「いってらっしゃい!頑張ってね!」


胸の前で拳をぎゅっと握ってみせて、ママは送り出してくれた。






「お久しぶりです」


車に駆け寄って頭を下げると、窓の向こうの圭吾さんは、きょとんとした。


少し間があって、ドアが開かれる。


私は遠慮がちに車へ乗りこむ。


ドアを閉めると、ぎこちない空気。




やっぱり私の格好、変だったのかな。……




早く何か言ってほしい。


せっかく久しぶりに会えたのに、顔を見ることもできない。


不安で、恥ずかしくて、体を強ばらせていると。




「なんか今日、ふわふわしてるね」




圭吾さんは真顔で、まじまじと私を見つめながら言った。




「ふわふわ、ですか」


「うん」


「変……ですか?」


「いや、変じゃない」


「そう、ですか」




右側から感じる視線は、まだ消えない。


不安は小さくなったけれど、恥ずかしさは大きくなった。