「気にすること、ないよ」




手を引かれて、暗い道を歩く。


泣きすぎて、頭がぼうっとしている。




「きっと、うまくやれる方法があるって」




自分だってつらいはずなのに、綾乃はずっと私を励ましてくれてる。


でも、駄目だ。


あの一瞬の絶望を見てしまった。




彼の声を食べること。


それは、彼から声を、歌を、奪うということ。




命を奪う、ということ。




不意に、腕がぐいっと引かれた。


「良からぬこととか、考えないでよね」


顔を上げると、眉をつり上げている綾乃と目が合う。




「そんな顔しないでよ」


と、怒っている。


でも、泣きそうでもある。




ねえ、私は今、どんな顔をしてる?