無駄に広い城内。
学園一位だった持久走大会より、必死なんじゃないの私。
「ねぇ、パパとママは!?」
「あぁ、お茶してましたよ?」
「あぁ!!私のアールグレイ!!」
八十段近い大階段を、勢いよく降りていく。
「お嬢様、怪我しちゃいますよ!」
「んなことより、こっちが大事!!」
最後の十段を思いっきりジャンプして、無事着地。
そして大食堂の重い扉を開ける。
「パパ!?ママ!?」
「あら麗華、どうしたの?
そんなに息荒げて」
私の母、桜子Sakurakoは暢気にそう言って、大福を口に入れる。
「あら、紅茶と和菓子も悪くないのね」
「あっ!私の大福!!」
「おいしいわぁ、
麗華もどう?」
昔から、
いや実際には6歳までしか一緒にいなかったけど。
母、桜子はこんな人だった。
天然なのか、計算なのか。
人の心を掴むのが上手な人。

