箱の中には、
体育座りをした男...
まっすぐに、
鋭い冷たい瞳で私を見ていた。
「んっっ...」
脳内がパニックを起こしていて、
習っていたはずの武道が出来ない。
口を後ろから塞がれているのは確か。
しかも、今までに感じたことがないほどの強い力で。
「んんんッ、んーんーんッ!!」
「お前が、恵比寿麗華か」
ハスキーな声だった。
女子が聞いたら、100%ときめくような声。
そんな声に、脳が一回停止した。
興奮状態が落ち着いて、この状況をきちんと冷静に判断できる。
口に触れるのは手。
温度がある...人間だ。
声からして男なのは確か。
そして何より、武道経験者。
いや、かなり上手いぞこの男。
ワザをかけようと思っても、身体がピクリとも動かない。
100キロの男を倒すほどの実力の私が、こんなに動けないなんて!!
やっぱ、人間じゃないの?
ならば、最終手段。
心痛くなるから、あんまし好まないけど...