ひとつ、屋根の下で



「し、しの」


「黙って」



やっとのことで出た声も、決して強い口調では無いのに凌の言葉にやんわりと押しとどめられる。


ふわっと鼻腔をかすめた凌の匂い。


きっと整髪剤かなにか。


甘さより爽やかさの勝るその香りが、結構好きだったりする。



「沙波」



呼ばれた瞬間心が音を立てるのは、気のせい?


心が震えると思うのは。


胸がキュウと苦しくなるのは。


……どうしてなの。



痛いくらい心が竦むから、それをこらえるために思わず眉根を寄せていて。


そんな私に、凌はふっと笑った。



触れるか触れないかの距離にある互いの唇。



だけど、確かに感じたのは、笑ったときに凌の唇から洩れた微かな吐息。