ひとつ、屋根の下で



「……っ」



唇に押し当てられた人差し指。

いきなりの感触にびっくりして、思わず開きかけていた唇を閉じた。



私が黙ったのを見て、凌はゆっくり微笑んだ。


そして掛けていたメガネをはずし、テーブルの上に置く。


似合ってたのに、なんて思うけど、それを伝えることもできない。



────長い睫毛に縁取られた、綺麗な線の二重の瞳。


吸い込まれそうなほどの深い黒。


……その瞳はまるで、引力を持っているかのようで。


一度捕えられてしまったら、自力で逃げ出すことなんて、自分から離れることなんて、できないんだ。



確かに距離が近づいているのに。


それに気付いていないわけでもないのに。



……どうしても、逃げられない。



自然なことのように近づけられた顔。


私はただただ、その綺麗すぎる瞳に、囚われていた。