ひとつ、屋根の下で



私は、瀬野くんに言われたとおり最寄りの駅に向かった。


改札近くのベンチで大人しく座って待っていると、ふいに上から影が降りてきて、顔をあげたら息をきらした瀬野くんが立っていた。


「……さっきぶり」


「そういうあいさついらないから。まったく、上着も着ないで。あんた、本物のアホなの!?」


そう言いながら、自分が着ていたコートを脱いで私に掛けようとしてくれる瀬野くん。


私は慌ててその手をコートごと押し返した。


「これじゃ瀬野くんが寒いから!大丈夫、私なら全然、寒くないから」


「……嘘つき。こんなに手冷たくしてるくせに」


そう言って、コートを押し返したときに触れた手を、眉を顰めながら握ってきた。


ふわりと温かさが伝わってきて、緩くなった私の涙腺は、そんな優しさに簡単にまた涙を流そうとする。


それを必死に押し留めて、私は笑って見せた。


「ばれた?……うん、寒い」


「そりゃあそうでしょ。どっか店入りたいけど……、このへん何もないわけ」


「うん、何もない……。ていうか瀬野くん、心配してきてくれたんだと思うけど、私なら大丈夫だから。わざわざ来てくれてうれしいけど、本当に、大丈……、ふぎゃ」


言い終わる前に、片手で両ほっぺたをむぎゅっと掴まれた。