ひとつ、屋根の下で



嗚咽まじりになんとかそれだけ言うと、気付いたら凌の部屋を飛び出していた。



それどころか、自分の部屋に戻ることもせずに、家を飛び出していた。


「沙波!?」


背中に掛かる、凌の驚いたような声から、今はなんとか逃げ出したくて。


走って、走って、ようやく立ち止まったのは、ポケットに入っていた携帯電話の震えに気付いたから。


コートも着ないで外に出てきてしまったことに、今更気付いた。


ぶるっと、寒さに身体が震える。



「……もしもし」



ケータイの画面に出た名前に驚きつつ、私は涙を手の甲で拭いながら電話に出た。



『……訊けた?』



電話の向こうから聞こえてくるのは、凌よりも少しだけ低い声。


「瀬野、くん……」


寒さと涙のせいで、ぐす、と思わず鼻をすすった。


……それが、いけなかった。


瀬野くんが、電話の向こうで眉を顰めたのが空気でわかる。