ひとつ、屋根の下で


思わずそう言うと、凌がムッとしたのがケータイ越しの空気で伝わってきた。


『……自分でもちょっとそう思ったけどさ』


「あはは。……もう帰るよ。大丈夫だから、心配しないで」


『ん。気を付けろよ。……いや、やっぱ駅まで迎えに行くわ』


「大丈夫だってば」


それから、迎えにくるという凌の申し出をなんとか断るために、大丈夫、を繰り返した。



『……本当に、気を付けろよ』


「うん。……ありがとう」



やっと電話を切ったときには、瀬野くんにあきれた視線を向けられていた。


電話の向こうの凌の声は聞こえなくても、私の返答で会話の流れは筒抜けだろう。



「……ここまでされて気付かないとかマジでありえないんだけど。同情するわ、アイツに」


「……だから、これは凌が優しいだけなんだってば」


「そう思うなら一生そう思ってれば。もう助言タイムは終わり。あとは自分で考えて行動しなよ。

……俺だって、本当はこんなこと言いたくて言ってるわけじゃないんだから」