凌のことを考えたら、いつもの優しいハグと愛しい体温が心いっぱいに思い出されて、余計に涙が出た。
なんだか立っているのもつらくなって、あの黒い人が出てきた細い路地に入ったところにあった小さな公園のベンチに腰をおろした。
鞄の中から、ケータイを取り出す。
……ほとんど、無意識だった。
ケータイを取り出したことも、凌の名前が口から零れていたことも、凌に電話を掛けていたことも。
だけど、電話に出た凌の声に、心が、身体が、今すぐ会いたいと震えて。
『今行くから、そこで待ってろ。……大丈夫だから』
その言葉に、私はどうしようもなく、泣き崩れた。
通話が切れたことは分かったけど、私は通話終了のボタンを押すこともできずにツーツーと流れる電子音が響いたケータイを握り締めたまま、声を上げて、泣いていた。


